2022年も残りわずかとなりました。
今年は新たな挑戦として、海外クリエイターの創作活動を支援させていただく機会がございました。
ご案内を逸しておりましたので、遅ればせながらご紹介させていただきます。
焼きものの町・有田では、佐賀県とともに2016年よりアーティストインレジデンス事業に取り組んでおり、今年の夏は2名の海外クリエイターが3ヶ月間有田町に滞在し、創作活動を行いました。
やま平窯ではそのうちのひとり、オランダ出身の視覚芸術家 Sigrid Calon(シグリッド・カロン)さんの創作をサポートさせていただきました。
日常の風景を写真で切り取り、グラフィックに落とし込むカロンさんの発想はとても興味深く、今回は、やま平窯の作業場で見つけた「水ごて」という技法に使う道具(ヘラ)にインスピレーションを得て、作品づくりをされていました。
「水ごて」は、石膏型を回転させながら、ヘラを押し当て生地を成形する技法で、器の形状に合わせ独自のヘラを使います。カロンさんは、やま平窯にある膨大な数のヘラをそのまま模って生地にし、2サイズのドットを配した転写シートを重ね合わせることで、独創的なパターンやカラーリングが生み出される、ユニークな作品に仕上げました。
さらに、やま平窯の菊割ボウルを制作する圧力鋳込みの石膏型を、そのまま模ったオブジェ作品も創作。型の型を作るという不思議な作業となり、かなり重量があるため鋳込むのに苦労しましたが、これも良い思い出です。
カロンさんはそれぞれの工程を動画撮影しており、レジデンス事業の成果発表会では、非常に時間のかかる作業であることを、早回しの編集動画でコミカルに紹介して笑いを誘っていました。
いずれの作品も用途のあるものではありませんが、グラフィックデザイナーらしい配色や、発想の異なるものづくりに、新鮮な気づきをいただいた体験でした。
海外のクリエイターとの協働は初めてで、言葉の壁もあり、コミュニケーションが難しかったのですが、ものづくりを通して、お互いの思いを感じとることができたのではないかと思います。
菊割ボウルの型の作品は、やま平窯のギャラリーショップに展示がございますので、ぜひご覧ください。
クリエイター紹介: Sigrid Calon(シグリッド・カロン)
オランダ出身の視覚芸術家。
ティルブルグ芸術大学でテキスタイルデザインを専攻に学び、現在もティルブルグを拠点に活動。Swatch、ユニクロ、Forboなどの国際企業とのコラボ商品のほか、アムステルダム中心街にあるアーケードの照明インスタレーション、ティルブルグでの巨大な壁画やショッピングセンターの屋上などの様々な場面で作品を展開している。
https://www.sigridcalon.nl/